本当のPMFとは?
はじめまして
はじめまして。STARTUP STUDIO SEREAL(シリアル)のCEO安達です。SEREALは共闘・協業・創業でスタートアップを量産するスタートアップスタジオです。
SEREALはスタジオとして数多くのスタートアップに挑戦してきました。スタートアップに関わる当事者としてスタートアップは非常に尊い存在だと思いますが、その反面、難解で複雑でハードでもあります。
スタジオとして、これから新しく事業をつくろうとしている方、今まさに事業を頑張っている方が、少しでも効率的に事業を成長できるように、PMFを達成する確率が少しでも高くなるようにと思い、SEREALで構築しているスキルやナレッジを公開していく取り組みをはじめることになりました。
みなさんの事業における疑問や課題が解決するように、世の中に溢れているような概論的な話ではなく、当事者だからわかる、より解像度の高い実践的な内容を届けられればと思っています。
初回のテーマは「PMF」です。それではみなさんよろしくお願いします。
PMFの定義は曖昧で人によってさまざま
X(Twitter)で著名な方がPMFに対してどのように言及しているしているか調べましたが、やはりPMFに対していろいろな解釈がありそうです。また「PMFの定義」「PMFの達成条件」「PMFを達成したらどうなるか(AfterPMF)」「PMFの判断指標」など観点が複数混在しているためこれもPMFの理解を難しくしている理由といえます。
一般的なPMFの定義と解釈
PMFはProduct Market Fitの略であり、Product(製品)がMarket(市場)に適合している状態を指す言葉です。「製品が市場に適合している」という部分が解釈のわかれるところで、そのためPMFの定義が曖昧になっているといえます。
一般的な解釈の例
- 製品が提供価値を実現できている
- 製品が実際の市場で売れている
- 製品が売れており利益がでている
このように解釈はさまざまですが、SEREALではPMFを定義するアプローチとして『PMF自体の解釈』ではなく、『PMFを達成したらどうなるのか』=『AfterPMFの定義』をすることでPMF自体の定義をしました。
AfterPMFの定義
PMFの解釈が複数あるようにAfterPMFに関してもさまざまな見解があります。
しかし、SEREALではスタートアップを量産するスタートアップスタジオとしてより理想的なPMF後を目指すべきと考え、AfterPMFの定義を資本(資金や人材など)を投下することで事業が収益性を担保したまま適当な規模まで成長していくこととしました。
例えば、スキマバイトサービスを提供しており100億円の売上規模を目指している事業者を例に説明すると。現在1000万円規模では収益化できており、ここに資金や人材など資本を投下した時に、現在の収益性を維持したまま100億達成できる状態が理想的なAfterPMFといえます。
PMFの達成条件
次に、AfterPMF=資本を投下することで事業が収益性を担保したまま適当な規模まで成長していくとしたときに、PMFの達成条件を考えます。
資本を投下すれば事業がスケールするわけですから、下記のような証明が必要になります。
- 製品(サービス)の証明
プロダクトやサービスがユーザーのニーズを満たすものになっている
※ プロダクトまたはCSを含めたサービス全体でニーズを満たせているか判断する
- 販売の証明
1を達成した上で、プロダクトをユーザーに届ける再現性のある手段が確立されている
※ どのようにユーザーを獲得し、製品をどのように流通させるかなど
- 収益の証明
1.2を達成した上で、適当な事業収益が確保されている
※ 事業者によって適当な値は変わるが営業利益20%以上、エコノミクス3以上など
- 規模の証明
1.2.3を達成した上で、適当な規模に事業成長が可能な余白がある
※ 10億の売上規模が必要な事業の場合、たとえ1.2.3が確立されていても(顧客セグメントを増やせないなど)1億の売上しか達成できない場合、規模の証明は達成されたとはいえない
上記の達成条件1.2.3.4すべてを達成することでPMFとなります。1だけまたは1.2だけなど、上記の一部を達成条件と認識・設定している方も多いと思いますが、SEREALでは1.2.3.4すべて達成してはじめてPMFであるとしました。
PMFの評価指標
次に、PMFの評価指標をいくつか紹介します。評価指標はPMF自体の評価ではなく上記4つの達成条件それぞれにわけて評価すると良いでしょう。
評価指標と評価基準は事業や製品によって異なりますが、それぞれどんな指標で達成の可否を判断するのか、SEREALでよく利用しているものなどを参考として紹介します。
指標 | 評価対象(達成条件) |
アクティブ率(MAU / WAU) | 製品 |
CVR / 成約率 | 製品・販売 |
リピート率 / アップセル率 / 有料課金率 | 製品・収益 |
Retention / LTV / 継続年数 | 製品・収益 |
Churn Rate | 製品・販売・収益 |
新規獲得数 / NMRR | 販売 |
CPA / CAC / CPI | 販売・収益 |
ARPA / ARPU | 製品・販売・収益 |
Unit Economics | 収益 |
CAC Payback Period | 収益 |
Diminishing returns(チャネル別) | 規模 |
セグメント別SOM | 規模 |
一方で、PMFの評価指標としてよく紹介される、CSAT(顧客満足度)やNPSなどは個人的にはあまりおすすめしていません。
調査の対象となる顧客数が多い場合は有効な場合もありますが、PMF前は対象が少ないことも多くアンケート形式よりも直接インタビューなどをすることで満足しているか確認する方がよいです。(PMFを達成し顧客数が増えたあとで、より客観的にPMFを立証する方法としてなら活用してもよいと思います)
PMFの再定義
さて、前置きが長くなりましたが、ここで改めてAfterPMFから逆算したPMFの定義をしたいと思います。
AfterPMFを『資本を投下することで事業が収益性を担保したまま適当な規模まで成長する』としたときに、これを実現するためには、PMFの達成条件である製品と販売が確立し(1.2)それによって適当な収益性と規模が担保されている(3.4)必要があります。
言い換えると、PMFとはアイデアやニーズ、想いが製品となり実際のマーケットで持続・拡大可能な事業として成立した状態と定義することができます。(例:芸能でいうところのアイドルとしてデビューした状態)
まとめ
最後にPMFの定義AfterPMFの定義、PMFの達成条件、PMFの評価指標をまとめます。
PMFの定義
持続・拡大可能な事業として成立した状態
AfterPMFの定義
資本を投下することで事業が収益性を担保したまま適当な規模まで成長することができる
PMFの達成条件
製品、販売、収益、規模の証明がそれぞれできている
PMFの評価指標
- 製品(アクティブ率,リピート率,チャーンレートなど)
- 販売(CPA,CAC,成約率など)
- 収益(Unit Economics,CAC Payback Periodなど)
- 規模(Diminishing returns,SOMなど)
いかがでしたか?
PMFはスタートアップや新規事業をしている方ならほとんどの方が目指すであろう重要なマイルストーンのひとつです。PMFを目指す上でPMFの解像度が高いことは必ず有利に働くはずです。この記事が少しでもみなさんのお役に立てると幸いです。
次回は、このPMFをどのようにして達成するのか、わかっちゃいるが難しいPMF達成のプロセスについて実践レベルで詳しく説明します。実務と並行して頑張って書いてるので時間がかかりますがみなさんの応援が励みになります。この記事がよかったらいいねやコメント、シェアいただけると嬉しいです!
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