MVPをリリースしたらすべきこと
MVPはリリース後に混乱する
前編では、MVPの定義や検証、設計手順などについて解説しました。後編のテーマはMVLP(詳しい説明は後述)です。
MVLPはSEREALでつくった造語で、MVPの次に目指すべきプロダクトの状態を指します。社内及びパートナーとのプロジェクト内ですでに活用していて効果を感じている概念です。
MVLPという言葉をつくった背景ですが、それはMVPを設計し実装するまでは一つの目標に向かって迷いのなかったスタートアップが、MVPのリリース後に混乱するケースがあまりに多いからです。
MVPをリリース後によくある混乱
- 売れない、継続利用されないが、原因が製品なのかそれ以外なのかわからない
- 売りやすい人に売り続けた結果、誰のための製品かよくわからなくなった
- 製品の改善要望に一貫性がなく何を軸に改善していけばいいかわからない
- とりあえず営業にリソースを投下した結果、MRRは拡大したがいつまでも収益性が改善しない
結論、このような状況に陥る大きな要因は製品にあり、プロダクトが不完全もしくは完全な状態が不明瞭だからです。
このような問題を解決するために、SEREALではMVPをリリースした後に目指すべきプロダクトの状態(MVPリリースの次のステップ)を明確にするMVLPという概念を定義しました。
MVLPとは / MVLPの重要性
MVLPとは
MVLPはMinimum Valuable Productの略で、MVPをリリースしたあとに目指すべきプロダクトの状態を指します。この目指すべき状態とは「想定しているターゲットに対して価値を十分に提供できるプロダクト」です。このMVLPにするために、リリース後はMVPをどんどん改善していく必要があります。
MVLPの重要性
MVPをリリースしたらほぼ製品は完成と思い込んでいる起業家も多くみかけますが、MVPはあくまで仮説のプロダクトでありこれを改善することで、MVLPつまり実際に価値を実現するプロダクトにしていく必要があります。
社内の経験則でいうと、MVLPを100点としたときに、筋のいいPdMが設計したとしてもMVPは50点程度になることが多いかと思います。(どんなによくても半分以上はリリース後に改善が必要です。)
MVLPになっていないプロダクトを提供開始しても商談化率、成約率などは悪くセールスコストはオペレーションを洗練してもなかなか改善されません。同様にオンボーディング、定着などサクセスコストもかかり続けることになります。事業効率性が非常に悪い状態が続きます。
そのため、MVPをリリースしたらセールス、サクセスのオペレーションを磨くとともに、MVLP化に向けて製品を磨くことが重要になります。
このとき販売・製品・サクセスを同時に洗練させる必要があり、特にリリース直後はそれぞれを分業するのではなく、3者が密に相互連携できるワンチームで事業•プロダクト開発に取り組むといいと思います。
MVPとMVLPの違い
MVPとMVLPの違いを理解することで、MVLPの理解度をもう少し高めていきましょう。
MVPとMVLPの比較
MVP(Minimum Viable Product) | MVLP(Minimum Valuable Product) | |
概要 | 価値の実現を目指した(仮説段階の)プロダクト | 価値の実現を証明した(立証された)プロダクト |
目的 | 提供価値を実現できる製品か否かを実際に市場投入して検証し改善する | 特定のセグメントにおいて提供価値を実現できた製品、次はターゲットや提供価値の拡大を検討する |
状態 | 仮説を検証する(している)状態 | 仮説が立証された状態 |
期間 | MVP開発期間(1-6ヶ月程度) | MVLP達成期間(1-3年程度) |
注意点やポイント | 仮説の検証コストを下げるため、提供価値を実現する最小の製品を設計し開発する | MVPリリース後はMVLP達成にフォーカスする。基本はMVLPを達成していない状態でセグメントや提供価値を追加したりしない |
タイムラインでみるMVPとMVLP
MVLPの達成方法(MVPの改善方法)
ここからは、MVPをどのように改善するか、MVLPをどのようにして達成するかを説明します。
一番大事なことは、「特定のセグメントにおいて想定する提供価値の実現をゴールとし、改善ポイントをみつけ改善をしていく」ということです。製品開発に入る前に価値の検証が精度高くできていれば、その価値を実現する製品さえつくることができればユーザーは必ず満足するはずです。(MVPを使って価値の調査•検証も同時に行うケースもありますが、これは別の機会に)
この時、MVPをMVLPにするために必要な改善ポイントのみつけ方がいくつかありますが、今回は主要なものを4つ紹介します。
MVLP達成へのアプローチ
- 価値構造化:価値を構造的に分解し価値実現の必要条件をだすことで改善ポイントを特定する
- ファネル分析:登録→利用開始→アクティベーションなどファネル分析を基に改善ポイントを特定する
- 顧客やCSフィードバック:顧客やCSの評価や意見をもとに改善ポイントを特定する
- エキスパートフィードバック:ドメインの専門家の評価や意見をもとに改善ポイントを特定する
アプローチ別の特徴
価値構造化 | ファネル分析 | 顧客やCSフィードバック | エキスパートフィードバック | |
概要 | 価値を構成要素を分解して各構成要素ごとにボトルネックを特定する | 登録からCVまでのファネルに分解しボトルネックを特定する | 顧客やCSのフィードバックをもとにボトルネックを特定する | エキスパートの知見をもとにボトルネックを特定 |
長所 | 価値に対して直接的に問題を発見できる | サービスごとの基準値があるためファネルごとに問題の有無が明確にわかる | データでは特定しにくいものも発見できることがある | 顧客自身がわからない問題を発見できることがある |
短所 | 価値の構造化が難しく、その精度に改善ポイントの特定が依存する | 一定のN数が必要。間接的な指標なので直接的な改善ポイントが特定できない | 提供価値と関係のない顧客固有のFBもあるので取捨選択が必要になる | 必ずしも製品開発のプロではないので取捨選択が必要になる |
MVPをMVLPにするには特定のアプローチだけでなくさまざまなアプローチを組み合わせることでその精度を高めることができます。ただし、複数の情報源があることで精度は高まりますがマネジメントが難しくなるため、どこまで複数のアプローチを併用するか、またはそのタイミングに関しては起業家やプロダクトマネージャーの力量を加味して運用するといいと思います。
MVLPの評価指標
それでは、MVPがMVLPになったかどうかはどのように評価すればいいでしょうか。
MVLPかどうかは定量・定性、直接・間接さまざまな評価手法を組み合わせて総合的に評価していくといいと思います。
例えば、「超早く届くこと」が提供価値のデリバリーサービスをリリースしたとします、その場合は下記のような評価指標で評価することができます。
直接指標 | 間接指標 | |
定量的 | 配達リードタイム15分以内など | アクティブ率
継続率
課金率
リピート率
顧客満足度やNPS |
定性的 | 配達の早さに対する顧客の反応やそれに対する起業家の洞察 | 総合的なサービスに対する顧客の反応など |
間接的な評価指標はその評価基準が表にでやすく、みなさんが馴染みのある指標なので、これを計測、改善することにフォーカスしがちですが、間接指標は遅効性のある指標も多いので、個人的には提供価値を明確にし定量・定性かかわらずなるべく直接指標で評価することをオススメしています。
まとめ
- MVPリリース後に混乱しないために、リリース後はMVLPを目指す
- MVPは価値の実現を目指した仮説のプロダクトであり、MVLPは価値を実現した(価値を立証した)プロダクト
- MVPをMVLPにするためには特定のセグメントに対して価値の実現を目指した改善をすることが重要
- MVLPになったかどうかはさまざまな評価指標を組み合わせて総合的に判断するが、直接指標を重要する
いかがでしたか?これからMVPを設計する人も、今まさにMVPを改善している最中の人にも必ず理解してほしいと思いこの記事を書きました。ぜひ周りの方にもシェアいただけると嬉しいです。
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